建設業界において、個人事業主として活動したい方は多いでしょう。
個人事業主として実際に事業を進めていく中で建設業許可の取得が必要となるケースがあります。
例えば、500万円以上の工事を受注する場合や元請け業者かrた許可の取得を依頼された場合などです。
この記事では個人事業主にフォーカスして建設業許可を取得するためのポイントを解説しております。
また、建設業許可は各都道府県で要件のポイントが異なるケースがあります。
参考として岡山県で建設業許可を取得するポイントを例としてこちらの記事で解説しておりますのでご参考にしてください。
目次
個人事業主としての建設業許可取得の概要
そもそも建設業許可は個人事業主で取得できるものなのか?という質問も良くありますが結論可能です。
法人成りしなくても問題ありません。
個人事業主が建設業許可を取得する条件
個人事業主が建設業許可を取得するためには、以下の条件(大きく6つ)を満たす必要があります。
基本的には法人と同様です。
- 経営業務の管理責任者の確保
- 専任技術者の確保
- 財産的基礎
- 誠実性
- 欠格要件に該当しないこと
- 社会保険への加入
これらの条件を満たし、正確な申請書類や証明書類を提出し、審査を受けることで個人事業主としての建設業許可を取得することができます。
経営業務管理責任者について
経営業務管理責任者は、個人事業主の場合基本的には本人が該当となります。
経営経験が要件を満たしているか確認しておきましょう。
経営経験の具体例:
- 個人事業主になる前に勤めていた建設会社で3年役員を経験+個人事業主で2年間事業を継続
- 個人事業主で5年以上事業を継続
などで要件を満たしたことになります。
※経営経験は以前は取得する許可業種ごとに必要でしたが、法改正により許可業種である必要はなくなりました。
経営経験を証明するには以下の書類が必要となります。
- 該当年数分の確定申告書の写し(個人事業主としての経験を証明する場合)
- 個人事業主になる前に勤めていた会社で役員として名前が記載されている履歴事項全部証明書(以前の勤務先での経験を証明する場合)
- 工事請負契約書
- 注文書
専任技術者について
専任技術者は、雇用している従業員に要件を満たしている人がいればその方がなることができます。
従業員を雇っていない、もしくは要件を満たしている人がいない場合は本人が該当となります。
経験を証明するには以下の書類が必要となります。
- 資格の合格証など(資格で許可を取る場合)
- 工事請負契約書や注文書(経験年数で許可を取る場合)
- 卒業証明書(特定の学科を卒業しており経験年数を緩和する場合。※卒業証書では無いので注意)
財産的基礎
一般建設業
下記のいずれかを満たしている必要があります。
- 500万円以上の残高証明書(受付日から1ヶ月以内のもの)
- 自己資本の額が500万円以上あること
個人事業主の場合は
「期首資本金+事業主借勘定+事業主利益 -事業主貸勘定+利益留保性の引当金・準備金」となります
特定建設業
以下の全てを満たしている必要があります。
- 資本金の額が2,000万円以上であること
- 自己資本の額が4,000万円以上であること
- 欠損の額が資本金の額の20%を超えないこと
- 流動比率が75%以上であること
誠実性
個人事業主については事業主及び支配人が、請負契約に関して、不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと
欠格要件に該当しないこと
こちらは法人と同様です。以下に該当しなければ問題ありません。
- 心身の故障により建設業を適切に営むことができない者(精神の機能の障害により 建設業を適正に営むに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことが できない者)又は破産者で復権を得ない者
- 建設業の営業停止又は禁止期間が経過しない者
- 不正の手段により許可を受けたこと、又は営業停止処分に違反したこと等により建設業の許可を取り消されてから後5年を経過しない者(許可取り消しを免れるため、廃業届を提出した者を含む。)
- 禁錮以上の刑若しくは次の法令違反で罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者(建設業法、建築基準法、宅地造成等規制法、都市計画法、景観法、労働基準法、職業安定法、労働者派遣法、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律、刑法、暴力行為等処罰に関する法律の一定の条文)
- 暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
- 未成年者でその法定代理人が上記いずれかに該当する者
- 役員等、支配人、従たる営業所の代表者のうちに上記事項に該当する者がいるもの
- 暴力団員等がその事業活動を支配する者
社会保険への加入
※従業員5名未満の個人事業主は健康保険・厚生年金の適用が除外されています。
法人・個人や労働者数などによって加入すべき条件が変わってきます。
国交省のサイトに一覧表があるので確認しておきましょう。
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_tk2_000080.html
個人事業主から法人成りする際の許可はどうなるのか
以前は法人成りの際は、個人で取得した建設業許可を廃業し、法人として新たに許可を新規取得する必要がありました。
この場合、手続きのスケジュール上無許可期間が生じてしまったり、許可番号が変わるなどのデメリットが出てきます。
そこで、令和2年10月1日施行の建設業法改正により承継が可能になり新規取得する必要はなくなりました。
承継するには事業を承継するまでに、事業承継の認可を受けておく必要があるなどの要件を満たす必要があるので注意が必要です。
個人事業主が許可取得する際の必要書類
必要書類
閲覧用(つづり、3部)
- 許可申請用の表紙(閲覧用に丸)
- 建設業許可申請書
- 営業所一覧表
- 専任技術者一覧表
- 工事経歴書(許可を受ける業種ごとに必要)
- 直前3年の各事業年度における工事施工金額
- 使用人数
- 申請者・役員等・令3条の使用人等が欠格要件に該当しないことの誓約書
- 健康保険等の加入状況
- 建設業法施行令第3条に規定する使用人(支配人・営業所長等)の一覧表
- 個人用の貸借対照表
- 個人用の損益計算書
- 営業の沿革
- 所属建設業者団体
- 主要取引金融機関名
非閲覧用(つづり、3部)
- 許可申請用の表紙(非閲覧用に丸)
- 手数料貼付用紙
- 常勤役員等(経営業務の管理責任者等)証明書
もしくは常勤役員等及び当該常勤役員等を直接に補佐する者の証明書 - 常勤役員等の略歴書(常勤役員等(経営業務の管理責任者等)証明書を提出する場合)
- 常勤役員等の略歴書(別紙1)および常勤役員等を直接に補佐する者の略歴書(常勤役員等及び当該常勤役員等を直接に補佐する者の証明書を提出する場合)
- 専任技術者証明書
- 専任技術者の卒業証明書(学校卒業+実務経験で申請する場合に添付)
※(卒業証書では無いため注意が必要) - 専任技術者に係る資格証明書(免状、合格証明書等。国家資格等の場合に添付)
- 専任技術者の実務経験証明書(実務経験で申請する場合に添付)
- 指導監督的実務経験証明書(特定建設業許可申請の場合)
- 特定建設業の専任技術者に係る資格証明書(特定建設業許可申請の場合)
- 許可申請者の住所、生年月日等に関する調書
- 建設業法施行令第3条に規定する使用人(支配人・支店所長等)の調書(該当者がいるときのみ)
- 事業税納税証明書(納付すべき額及び納付済額の記載されているもの)
- 登記されていないことの証明書(本籍地の記載は不要)
- 身分証明書(本籍地のある役場で取得)
- 500万円以上の残高証明書
※財務諸表で500万円以上の自己資本を有しない場合 - 【健康保険及び厚生年金保険分】
「領収書又は納入証明書」の写し - 【雇用保険分】
「労働保険概算・確定保険料申告書」の控え+「領収書」の写し+事業所 非該当承認通知書の写し
確認資料(つづらず1部のみ)
【社会保険の確認資料】
経営業務の管理責任者等、常勤役員等を直接に補佐する者、専任技術者の健康保険被保険者証又は直近厚生年金標準報 酬決定通知書(年金事務所の受付印のあるもの)の写し
その他資料(つづらず1部のみ)
受領票(希望者のみ)
申請・審査・許可の流れ
建設業許可の取得には、以下の流れがあります。
- まず、申請を行う前に必要な資格や条件を確認し、適切な準備を行うこと。
- 次に、必要書類の作成・提出を行い、申請手続きに着手します。
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申請手数料の納入
都道府県知事許可の場合は90,000円
大臣許可の場合は150,000円 - 申請後、審査が行われます。
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審査期間は、一般的に約2ヶ月前後ですが、書類の内容や都道府県知事の状況により異なります。
審査を通過すると、許可証が発行されます。
許可取得後も、変更届の手続きや5年に1度の更新が必要となりますのでスケジュールなどの管理には注意が必要です。
個人事業主が建設業許可取得する場合のメリット・デメリット
個人事業主の建設業許可取得のメリット
個人事業主が建設業許可を取得するメリットは、以下の通りです。
- 500万円以上の工事を請け負うことが出来る
- 業務範囲が広がり、多様な仕事が受注できることで収益向上が期待できる
- 許可を持つことで業界内での信頼性向上が期待され、取引先との関係構築がスムーズになる
- 法人で許可取得の申請をするよりも比較的書類や手続きが少ない
など
個人事業主の建設業許可取得のデメリット
個人事業主として建設業許可を取得するには、いくつかのデメリットが存在します。
- 毎年の決算変更届の手続きなどの業務を行う必要があり労力がかかる
- 法人成りする際に承継などの手続きが発生する
など
これらのデメリットを考慮しつつ、個人事業主として建設業許可を取得することが、自身のビジョンや経営状況と合っているか慎重に判断することが重要です。
個人事業主の建設業許可取得まとめ
個人事業主が建設業許可を取得する方法を解説しました。
手続きは大変ではあるものの、許可を取得することでメリットが多々あります。
本業が忙しくリソースが割けない場合は専門家である行政書士へ依頼することをお勧めします。