電気工事業登録について。建設業許可との違いや手続きを解説

公開日2024年12月15日
更新日2025年01月17日

電気工事業登録について。建設業許可との違いや手続きを解説

電気工事業登録と建設業許可、その違いや手続きについて理解することは、新たな事業を始める際や取り組み方を検討する際に役立ちます。
本記事では、電気工事を行う場合に必要な電気工事業登録と建設業許可の違い、それぞれの取得手続きを解説します。

電気工事業登録と建設業許可の違いとは?

電気工事業登録と建設業許可は、いずれも電気工事に関与する事業者が取得すべきものですが、その目的や対象業者に違いがあります。
建設業許可は500万円以上の工事を請け負う場合は必要で500万円未満の軽微な工事では取得不要ですが、電気工事業登録は電気工事業をおこなうのであれば500万円未満の工事でも登録が必要となります。

建設業許可を取得していたとしても、電気工事を行う場合には後述するみなし登録電気工事業者の届出が必要になります。
ですので、逆を言うと電気工事業に関しては建設業許可を取得しただけでは行うことができないので必ず電気工事業登録に関する手続きが必要になるのです。

電気工事業登録のみで事業をおこなっていた会社が500万円以上の工事を請け負う場合は、建設業許可が必要になります。

電気工事業登録とは

電気工事士法に基づく一般用電気工作物または自家用電気工作物を設置し、又は変更する工事をいいます。
電気工事業法に基づき、登録、届出又は通知の手続をしなければ電気工事を請け負うことはできません。

電気工事士法と電気工事業法が適用される電気工作物は、 「一般用電気工作物等」及び「自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備のみ)」に分けられます。

  • 一般用電気工作物等
    一般住宅やコンビニなどの屋内配線設備等のことを言います。
  • 自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備のみ)
    オフィスビルや工場などに設置される 受電設備、発電所以外の受電設備、構内電線路、負荷設備等のことを言います。

電気工事業者の種類

電気工事業者は以下の4つに分けられます。

  • 登録電気工事業者
    一般用電気工作物等かつ自家用電気工作物または一般用電気工作物等のみを行うもので建設業許可を取得していない場合、登録が必要
  • みなし登録電気工事業者
    一般用電気工作物等かつ自家用電気工作物または一般用電気工作物等のみを行うもので建設業許可を取得している場合、届出が必要
  • 通知電気工事業者
    自家用電気工作物のみを行うもので建設業許可を取得していない場合、通知が必要
  • みなし通知電気工事業者
    自家用電気工作物のみを行うもので建設業許可を取得している場合、通知が必要
建設業許可の有無 電気工事の内容 電気工事業者の種類 申請の内容
無し 一般電気工作物等のみ 登録電気工事業者 登録
一般電気工作物等かつ自家用電気工作物等
自家用電気工作物等のみ 通知電気工事業者 通知
一般電気工作物等のみ みなし登録電気工事業者 届出
一般電気工作物等かつ自家用電気工作物等
自家用電気工作物等のみ みなし通知電気工事業者 通知

表の通り、それぞれの種類によって登録、届出、通知と手続き方法が変わるので注意が必要です。

「みなし登録電気工事業者の届出」と「みなし通知電気工事業者の通知」についての注意点として、
建設業許可を取得した、もしくは取得していて新たに電気工事業を始める場合に届出・通知が必要になるのですが、許可の業種は電気工事業に限ったことでは無いのです。
例えば電気工事業の登録を受けていて、「とび・土工・コンクリート工事業の建設業許可」を取得した場合にも、届出・通知が必要になるのです。

電気工事業登録の要件

電気工事業登録は以下2点が大きな要件となります。

  • 主任電気工事士の配置
  • 法定備付器具を備えていること

主任電気工事士の配置

建設業許可の場合の専任技術者に似た要件ですが、電気工事業登録の場合は主任電気工事士の配置が必要になります。
主任電気工事士になるには以下いずれかの資格が必要です。

  1. 第1種電気工事士
  2. 第2種電気工事士(交付を受けた後、電気工事に関し3年以上の実務経験が必要)

第1種の場合は資格のみで要件を満たしますが、第2種の場合は実務経験も必要になります。
この実務経験は登録電気工事業者(みなし登録電気工事業者)で働いていた経験のことになります。
また、実務経験だけでは要件を満たせず、資格とセットになります。

法廷備付器具を備えておくこと

電気工事業者は営業所ごとに法廷備付器具を備えておく必要があります。

一般用電気工作物のみの場合

絶縁抵抗計・接地抵抗計・回路計の3種類です。

一般用電気工作物および自家用電気工作物の場合

絶縁抵抗計・接地抵抗計・回路計に加えて低圧検電器・高圧検電器・継電器試験装置・絶縁耐力試験装置
の7種類が必要になります。

継電器試験装置及び絶縁耐力試験装置については、購入する必要は無く賃貸契約を締結するなどして必要な時に使用できる体制になっていれば良いことになっています。

電気工事業登録の申請先について

営業所の所在地によって、申請先が変わってきます。

同じ都道府県にのみ営業所がある場合 各都道府県知事へ申請
2つ以上の都道府県に営業所がある場合 保安監督部または経済産業大臣へ申請

業務自体は複数の都道府県を跨いで実施する場合でも、各都道府県知事への申請のみで構いません。
あくまで営業所の所在地が基準になっているのです。

ちなみに営業所とは
電気工事の施工の管理(電気工事に使用する測定器具や図面類の管理)などの作業を行う店舗のことです。
施工の管理はおこなっておらず、契約の締結や経営の管理のみをおこなっている場合は営業所に該当しません。

電気事業登録の更新・変更について

電気事業登録は5年に1度更新が必要になります。
期限の切れる1か月前までに更新の手続きをおこなう必要があります。

変更があった場合は30日以内に変更の手続きをおこなう必要があります。

電気事業登録の必要書類

申請には以下の書類が必要になります。
期限の切れる1か月前までに更新の手続きをおこなう必要があります。

  • 登録電気工事業者登録申請書
  • 誓約書
  • 雇用証明書
  • 主任電気工事士の実務経験を証する書面
    ※第2種電気工事士が主任電気工事士になる場合
  • 主任電気工事士の電気工事士免状の写し
  • 営業所位置図
  • 備付器具調書
  • 登記事項証明書

まとめ

電気工事業登録を建設業許可との違いに触れながら解説しました。
電気工事業を営む場合には500万円未満の工事でも必ず必要になりますので、事業の開始スケジュールに合わせて手続きを進めることが重要になります。
スムーズに手続きをするためには専門家である行政書士へ依頼することをお勧めします。


この記事を書いた人
行政書士 山本祐輔

リガース行政書士事務所 代表
山本 祐輔

行政書士/宅地建物取引士/上級ウェブ解析士/2級FP技能士

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