建設業許可の専任技術者とは。証明の方法や配置技術者との違いを解説

公開日2024年11月03日
更新日2025年01月03日

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建設業の許可申請においては「専任技術者」の存在が要件のひとつとされ、非常に重要になります。
本記事では、専任技術者とは何か、その役割、要件、そして配置技術者との違いに焦点を当て、建設業における専任技術者の重要性について解説します。

また、建設業許可は各都道府県で要件のポイントが異なるケースがあります。
参考として岡山県で建設業許可を取得するポイントを例としてこちらの記事で解説しておりますのでご参考にしてください。

専任技術者とは

専任技術者とは、建設業の許可を取得する営業所において、一定の技術力を持つ者を指します。
一定期間の実務経験または国家資格である建築士や土木施工管理技士、電気工事施工管理技士など、各業種に応じた資格を持っている必要があります。

専任技術者の役割

専任技術者の役割は、建設業許可を取得するための基本的な要件のひとつであり、各事業所に必ず配置しなければなりません。
専任技術者が常駐していることにより許可を持っている建設業者が一定の技術力を確保できていることになります。
営業所に常駐し見積もりの作成や契約の手続きなどが主な業務となります。
ですので基本的に現場に出て業務を行うことはありません。

専任技術者の要件(一般建設業)

一般建設業での専任技術者の資格要件としては、一般的に以下の2つが挙げられます。

国家資格を保有していること

国家資格は、建築士や土木施工管理技士、電気主任技術者など、業種や業務内容に応じて異なります。
業種と資格の種類によって、資格を保有しているだけで要件を満たす場合もあれば、資格を保有しているだけでは要件は満たせず、加えて一定期間の経験が必要になる場合もあります。
詳細は国土交通省の資料でご確認ください。
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001619998.pdf

一定期間の実務経験

資格を保有していなくても、許可を受けようとする業種について一定期間の実務経験があれば専任技術者になることが可能です。
指定学科を卒業している場合は実務経験の期間が緩和されます。

  • 10年以上の実務経験があること。
  • 指定学科の高校、大学、専門学校を卒業し応じた実務経験があること。
    必要な実務経験は高校は5年、大学は3年、専門学校は5年となります。
    ですので10年の実務経験を証明するよりも期間を短縮できます。

指定の学科については下記参考ページをご確認ください。
※卒業した学科が該当するかは各都道府県の手引きでの確認や行政への相談が必要です。
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000085.html

専任技術者の要件(特定建設業)

特定建設業での専任技術者の資格要件としては、一般的に以下の2つが挙げられます。

国家資格を保有していること

こちらは一般建設業と同様になります。
必要な資格の種類は一般と特定で異なりますので詳細は国土交通省の資料でご確認ください。
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001619998.pdf

一定期間の実務経験

一般の実務経験とは異なり、要件が厳しくなります。具体的には下記です。
「一般建設業の専任技術者となる資格要件を満たす者で、許可を受けようとする業種について、発注者から直接請け負う工事の請負代金の額が 4,500万円以上であるものに関して、2年以上指導監督的な実務の経験を有する者」

指導監督的な実務の経験とは実務の経験を積んだ時の役割が重要になります。
具体的には工事現場監督者や施工監督などが該当です。

証明方法のポイント

証明の難易度は資格で証明するよりも実務経験で証明するよりも方が、集める書類の数も多くなるため大変です。
ですので、まずは資格を持ってる人がいないかを確認。
いなければ指定学科を卒業している人がいないかを確認。
指定学科卒業者もいない場合は実務経験10年以上の人で証明。
という進め方にしましょう。

専任技術者の常勤性について

専任技術者は常勤として雇用されることが必要になります。
常勤とは「休日その他勤務を要しない日を除き一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事している者」となり、要は休日以外はそこに出社して働いていることです。

テレワークでも下記の問題がなければ専任技術者になることが可能です。

ただし、以下の場合は専任と認められない可能性があります。

  • 住んでいる場所と会社が著しく離れている
  • ほかの企業で専任技術者になっている
  • ほかの企業で専任の宅建士になっている
  • 他社の社員になっている(出向はOK)

など

ちなみに、本店以外に営業所がある場合はそれぞれに専任技術者の配置が必要になるため注意が必要です。

要件の証明方法(必要書類)

前述の専任技術者の要件は行政に書面で証明する必要があります。
証明しなければ誰でも専任技術者になれてしまうためです。
各都道府県によって異なる場合もあるため、必ず手引きのご確認もお願いします。

資格で専任技術者を申請する場合

「資格証」の提示が必要となります。
コピーで良い都道府県もあれば、原本提出を求められる都道府県もあります。
紛失してしまった場合は早めに再発行をしておきましょう。

実務経験で専任技術者を申請する場合

この場合は資格での証明と異なり集める書類の数が多くなります。

「実務経験証明書」という書類に経験の内容を記入して提出しますが、記入した内容の根拠となる書類が必要となります。

指定学科を卒業していることの証明

まず、指定学科を卒業している場合は卒業証明書が必要となります。卒業証書ではないため注意が必要です。

卒業証明書は卒業証書が発行されたことを証明するための証明書になります。
卒業証書は教育機関において全課程を修了し、学校を卒業したことを証明する書類のことを証明するもので、一般的には卒業式の時に授与される証書です。
ですので、卒業証明書は基本手元にないため学校に発行してもらう必要があります。

実務経験の証明

こちらも各都道府県によりルールが異なりますので必ず手引きのご確認もお願いします。

許可業者の場合 実務経験を証明する期間に建設業許可業者であったことを証明するための書類として「建設業許可証」など
無許可業者の場合
  • 契約書
  • 注文書と請書

など

これらの書類を実務経験を証明する期間分用意する必要があります。
ただし、都道府県によって必要数が変わってきます。
契約書や注文書などは、証明期間内の1年に1件で良いところもあれば、数ヶ月に1件で良いところや毎月分必要な場合もあります。

ちなみに、1人が複数の業種の専任技術者になる場合当然それぞれの業種で経験が必要になります。
こちらの注意点として、経験年数の重複は認められません。
「大工工事」と「とび・土木・コンクリート工事」の許可を取得したい場合を例に。
2010年〜2020年で両方の業務の経験が10年間あるとしてもどちらか片方しか取得できません。
もう片方は別の期間で10年間の経験が必要となります。
つまり、合計20年分の経験が必要になるということです。

常勤性の証明

常勤性を証明する書類は下記となります。

  • 健康保険証
  • 標準報酬決定通知書

など

以前の勤務先での常勤性については「被保険者記録照会回答票」で証明が可能です。
被保険者記録照会回答票には過去の年金制度への加入履歴が記録されているため、過去の勤務先と勤務期間がわかります。

配置技術者とは 専任技術者との違い

専任技術者と似たものに配置技術者があります。
配置技術者とは施⼯する⼯事現場に配置される建設工事の内容に合致した所定の資格・経験を有する技術者のことです。
専任技術者が営業所に常勤なのに対し、配置技術者は現場で施⼯状況の管理・監督をします。
配置技術者には監理技術者と主任技術者の2つがあり、元請け・下請けや請け負う金額によって変わります。
監理技術者は元請け工事かつ4,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上を下請契約して施工する場合に必要となります。
主任技術者は、監理技術者の配置が不要な工事の際に必要になります。

専任技術者と配置技術者の兼任について

原則、専任技術者と配置技術者は兼任することができません。
専任技術者には専任性と常勤性が求められるためです。
ただし、下記一定の条件下では兼任が可能となります。

  • 専任技術者の常駐している営業所で締結された契約
  • 営業所と現場が近接していること
  • 営業所と現場が常時連絡が取れる体制であること
  • 専任性が必要のない工事であること

専任技術者の配置は維持し続ける必要がある

専任技術者が退職などで不在になった場合は、要件を満たす代わりの人がいれば14日以内に変更届を提出する必要があります。

問題は、要件を満たす代わりの人がいない場合です。
この場合は14日以内に専任技術者が不在になった旨の変更届を提出します。
※不在になった旨も提出する必要があることは注意が必要です。

その後30日以内に廃業届を提出します。
廃業届といっても事業そのものの廃業ではなく、建設業許可が取り消されるという意味合いになります。
専任技術者が新たに見つかった場合は再度許可を取得することができます。

専任技術者が突然退職するケースもあると思います。
代わりの人がいなければ許可は失効してしまうため大きなリスクになります。
ですので、そうならないために対策をしておくことが重要となります。

  • 日ごろから従業員に資格の取得を奨励する
  • 代表が自ら資格を取得しておく
  • 従業員の採用時は卒業学科や前職での経験年数も把握しておく

まとめ

建設業許可と専任技術者について解説しました。
建設業許可には専任技術者が不可欠な要素です。
専任技術者となれる要件を把握し、許可取得後も常に専任技術者を確保できるよう準備しておくことが重要になります。


この記事を書いた人
行政書士 山本祐輔

リガース行政書士事務所 代表
山本 祐輔

行政書士/宅地建物取引士/上級ウェブ解析士/2級FP技能士

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